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米国株の上昇持続: 本当に問題はないのか?

2024年これまでのところ、経済データは予想以上に力強く、S&P500種株価指数は終値で過去最高値を更新し、昨年末時点の市場予想の多くは大きく外れています。投資家は多数のリスク要因があるため株価の軟調を予想していましたが、実際には、米国大型株はここ数年見られた底堅さを維持しています。この先、投資家の間で再評価の動きが強まることから、目先、米国大型株の上昇ペースを抑える可能性のある要因、ならびに拡大サイクル入りの判断材料となりそうなトレンドについて考察します。

Head of North American Investment Strategy & Research

「ソフトランディング」から「ノーランディング」にシフト?

今年初め、投資家は流動性の逼迫、金利上昇の長期化に伴う個人消費の弱含み、企業収益減少の波及効果などを懸念していました。しかし、金利上昇の影響が明白に表れたのは(低所得世帯など)ごく一部に限られ、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ開始時期の後ずれ観測が浮上したにもかかわらず、米国株式は大幅に上昇しました。今年のS&P500株価指数は好調なスタートを切り、第1四半期のリターンは10.56%となりました(図表1)。

インフレが2%~3%レンジに正常化し、経済成長が予想を上回るペースで再加速するなか、ボラティリティは低水準にとどまり、労働市場は依然として極めて健全なことから、投資家は事ある毎に取り沙汰されてきた「ソフトランディング」ではなく「ノーランディング」を見込むべきではないかと考え始めています。市場は好調なスタートを切ったものの、以下に示すように、まだ織り込まれていない複数のリスクがあるため、先行きの不透明感はぬぐえません。

  • 金融政策の不確実性。市場は、2024年の利下げの規模と速度をめぐる予想の目まぐるしい変化に、対応を強いられてきました。年初には100bpを超える利下げを織り込んでいましたが、現在、市場が織り込む利下げ幅はわずか50bpです。データのばらつき度合も、頻繁に変化しています。力強い経済データを受けて年内のFRBによる利下げが難しくなるとのシナリオは、以前にはまずあり得ない「ファット・テール」に過ぎませんでしたが、実現する可能性が高まっています。利下げが実施されなければ、商業用不動産や市場の目に見えないレバレッジなど、(ごく少数の)脆弱な分野に打撃をもたらす可能性があります。当社チーフエコノミストSimona Mocutaの基本シナリオは100bpの利下げで変更ありませんが、市場にはまだ織り込まれていない不確実性があります。
  • 企業収益に対するリスク。S&P500種株価指数構成企業の2023年第4四半期の利益成長率は4.17%と、事前の見通しを踏まえると堅調な結果となりました(市場参加者のなかには、インフレ率の低下は企業の利益率低下を意味すると懸念する声もありました)。とは言え、結果は強弱まちまちでした。コミュニケーション・サービス・セクター、一般消費財・サービス・セクター、情報技術セクターは業績全体の10.35%寄与しましたが、利益成長率がマイナスとなったセクターもありました。マグニフィセント・セブン銘柄すべてが、期待通りのパフォーマンスを上げたわけではありません。一方、マグニフィセント・セブン銘柄以外にも好調だった企業はあります(ディズニー、チポトレ[CMG.N]、マリオットなど)。2024年の予想1株当たり利益(EPS)成長率は10.8%で、先ごろ0.58%上方修正されており、米国企業の利益が予想に届かなかった場合、株価は反落するでしょう。米国以外の企業業績のガイダンスは、先ごろ下方修正されました。
  • 慢心。今年のVIX指数は平均13.65と、低水準で推移しています。S&P500種株価指数のトータルリターンが26.29%となった2023年の平均値(16.86)をわずかに下回る水準です。市場は、足元でボラティリティを過小評価しているようで、ボラティリティのショート・ポジションが転換すれば、多大なリスクが生じる可能性があります。加えて、フロー・データ1によると、投資家はITなどの集中度が高い一部市場で株式をオーバーウェイトしています。

ここまでは総じて米国大型株について述べてきましたが、昨年のS&P500種株価指数の上昇を主に牽引したのはマグニフィセント・セブン銘柄であることを忘れてはなりません。年初以降、7銘柄のうち3銘柄(Apple、Tesla、Alphabet)のリターンはかなり低迷し(AppleとTeslaの場合、マイナス・リターン)、投資家がこれら巨大IT企業をこれまでのようには高く評価しなくなること、少なくともその見方に変化が生じることを示唆しています。当社は、残りの493銘柄に目を向ける時が来たのかもしれないと考えています。こうした見過ごされてきたセグメントの中には、クオリティ/バリュエーションの観点から妙味のある銘柄がみられます。

結論

様々なショックに見舞われても株式が底堅く推移していることに市場が特段驚かなくなり、かつて広がっていたリセッション懸念は概ね沈静化しています。ただ、堅調な経済データの発表が続いているにもかかわらず、成長率は依然として相対的にトレンドを下回っています。当社は、経済が拡大サイクル入りするのかどうかの評価を続けています。その判断を下すには、まず上記のリスクを綿密に分析する必要があり、景気がわずかに下方に調整してくれれば(これらのリスクが織り込まれている証拠であり)、その後の明るい動きに期待がもてます。こうしたなか、特に2024年第1四半期のリターンが堅調だったことを受け、当社は米国株式に対して慎重ながら楽観的な見方を維持しています。

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