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Uncommon Sense

投資家が知るべきだか、おそらくまだ知らない3つの事柄

「重要なのは何を知っているかではなく、何を知りたいかです」

— Mary Catherine Bateson

Chief Investment Strategist

心地良い第1四半期が終わってから、まだそれほど時間は経っていません。それでも投資家は、経済のソフトランディング・シナリオに対する以前の自信を急速に失い、その実現を疑問視するようになっています。予想以上に力強い経済およびインフレ関連データを受け、米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げ時期の予想はさらに後ずれし、利回りの急速な上昇につながりました。さらに4月半ばの流動性逼迫、決算発表シーズンの軟調な出足、中東における緊張の高まりが重なって、第2四半期のリスク資産市場は波乱の幕開けとなりました。

それでもリスク資産の見通しには、投資家が期待できる材料が数多くあります。経済は縮小ではなく、拡大しています。インフレは一直線ではないものの、緩和しつつあります。労働市場は力強く、そろそろ軟化するとの予想を覆しています。FRBの引き締めサイクルは終了し、次の政策措置はおそらく利下げと量的引き締めの減速になりそうです。政府支出は、特に11月の選挙に向け、米国経済を刺激し続けるでしょう。企業収益は伸びており、利益率は大幅です。そして消費者は、財とサービスに惜しみなく支出しています。

よって、今後数四半期に資本市場が壊滅的な打撃を受けるような事態は想像しにくくなっています。

一方で4月の混乱は、このように依然としてリスクテイクに積極的な見方があることと相まって、投資環境が一段と複雑になっていることを示しています。賢く市場に勝ちたいのであれば、多くの金融ニュースで語られているようないい加減な言説の先を見続けるべきです。というのは、今日のヘッドラインニュースを読んだ投資家は、米大型株のパフォーマンスは中小型株を圧倒し続け、市場リターンは引き続きマグニフィセントセブン銘柄に集中しており、米国長期国債利回りはFRBが利下げを開始すれば急低下するだろう、と当然のこととして考える可能性があるからです。

しかし、次の3つの事柄を知ればおそらく驚くでしょう。

  1. 中小型株は過去5ヵ月間、大型株をアウトパフォームしています1
  2. 今年これまでのところ、市場集中とマグニフィセントセブン銘柄の強さには根拠がありません。
  3. FRBが最後に利上げを実施した7月以降、デュレーションの長い米国債のパフォーマンスはマイナスとなっています ―― これは過去に例のないことです2

これら3つの未知の事実は、今年下半期、市場と投資家にどのような意味を持つのでしょうか。

中小型株に注目

S&P 500®種指数が直近の安値である4,103をつけたのは、2023年10月27日のことです。ちょう同じ頃、10年米国債利回りは5%を突破し、一時16年ぶりの高水準をつけました3

その後のリスク資産のラリーを促した要因の少なくとも一部は、米財務省の四半期定例入札スケジュールの変更(長期利付債より短期証券[T-bill]を選好)、ならびに12月半ばのFRBによる予想外のハト派転換(2022年3月の引き締めサイクル開始以降初めて、将来の利下げの可能性を反映)です。この強力なワンツーパンチにより、10年米国債利回りは10月終盤の5%から2023年末には4%未満へと低下し、リスク資産のラリーに火が付きました4

こうして市場がラリーに沸く中、S&P500種指数が安値をつけた10月27日から今年第1四半期末までに、中型株(S&P中型株400指数)と小型株(ラッセル2000指数)が大型株(S&P500種指数)をアウトパフォームした、という事実はかき消されてしまいました5

インフレの落ち着きによってFRBは積極的に利下げを進め、景気への打撃は回避できる ―― いわゆるソフトランディング ―― という投資家の期待が昨年末、中小型株を急速に押し上げました。実際、小型株は12月としては過去最高のパフォーマンスをつけ、対大型株でも2000年2月以来の高パフォーマンスとなりました6

しかし、ここ最近になって予想を上回るインフレ・データが公表されたため、FRBが今年利下げを実施できるのか、またその意向はあるのかとの疑問が浮上しました。その結果、大型株は年初来のパフォーマンス首位の座を中小型株から奪い返すことが出来ました。

この攻防戦から投資家が得た最大の教訓は、FRBの利下げ時期が明確になれば、見え隠れしていた中小型株ラリーが再燃する可能性があるということです。今年後半にはインフレ低下を受けてFRBが利下げを行うと予想するなら、今が相対的に割安な中小型株に投資する好機かもしれません。

市場の牽引役は見出しが示唆するより幅広い

マグニフィセントセブン銘柄のパフォーマンスが市場集中をもたらしているとの言説は、市場で飽きるほど取り沙汰されていますが、その信憑性には疑問があります。確かに昨年はその通りだったかもしれませんが、今年これまでのところ、そうした根拠は見当たりません。トレンドから先行きを推測するというのは、投資家がよく犯す過ちです。世界のどの国・地域においても、S&P500種指数のように時価総額で加重して構築したベンチマークでは、最も規模の大きな企業がリスクとリターン双方に最も大きな影響を及ぼします。これは誰もが知っていることです。

しかし、多くの投資家はテクノロジーセクターが年初来でS&P500種指数をごくわずかしかアウトパフォームしていないという事実を、まだ知らない可能性があります。そして彼らは、テクノロジーセクターの過去1ヵ月間のパフォーマンスが11セクター中下から2番目だと知って、大きな衝撃を受けるでしょう7。年初来のリターンがS&P500種指数を上回っているのはコミュニケーション・サービス、エネルギー、金融、資本財の4セクターのみです8。これは、コミュニケーション・サービスセクターのパフォーマンスを除き、マグニフィセントセブン銘柄にとってほとんど支援材料にはなりません。

さらに詳しく見てみると、大型成長株のベンチマークはバリュー株指数をややアウトパフォームしていますが、昨年のように急騰しているわけではありません。前述したように、実際のところ中小型株は、S&P500種指数が最近の安値をつけた昨年10月終盤から今年第1四半期末にかけて、S&P500種指数をアウトパフォームしています。そして世界的に見ても、株価指数は今年、欧州や日本を始めとする多くの国や地域で最高値をつけています。明らかに、今年のグローバル株式市場のパフォーマンスを牽引しているのは、マグニフィセントセブン銘柄より遥かに幅広い銘柄です。

そして上場株式以外にも投資できる市場参加者、つまり真のグローバル市場ポートフォリオでは、貴金属、コモディティ、不動産、暗号資産(仮想通貨)、プライベート・アセットへの投資が成功をおさめています。

グローバルに分散された投資ポートフォリオにおいて、マグニフィセントセブン銘柄に代表される市場集中という言説に根拠がないのは、今年だけのことではなく毎年当てはまります。

疑い深い人:米国長期国債の歴史的なマイナス・リターンに応じて調整

投資家は債券市場の歴史を目の当たりにしていますが、おそらくそのことを知りません。

デュレーションの長い米国債(バークレイズ・キャピタル20年超米国国債指数)はFRBが最後に利上げを行った2023年7月終盤以降、初めて10ヵ月連続でマイナス・リターンをつけています9。デュレーションの長い米国債は2020年8月以降大幅に下落(利回りが上昇)しており、2012年末以降のリターンは横這いです10

特に年後半にFRBの利下げが予想されるなか、デュレーションの長い米国債投資からのプロテクション不在は不可解です。

ただし、このようにパフォーマンスが低調でも、バークレイズ・キャピタル20年超米国国債指数に連動するファンドには数十億ドルの投資家資金が流入しました。2022年9月終盤に10年米国債利回りが4%を突破して以降、投資家はアセットアロケーションに際して、債券の残存期間の長期化を熱心に進めてきました。

デュレーションは、金利変化に対する債券価格の感応度を示す値です。残存期間が長ければ(たとえば20年超)、金利変化に対する債券の価格感応度は高まります。債券の利回りは、予想されている成長率、インフレ期待、タームプレミアムを反映します。利回りが低下すれば、債券価格は上昇します。

FRBが2022年3月から2023年7月まで積極的に利上げを行った後、多くの市場参加者は、経済成長は減速し、インフレは低下し、FRBは利下げを迫られると予想しました。これは典型的なパターンです。デュレーションの長い債券を市場の実勢利回りで購入すれば、投資家は金利低下の恩恵を最大限受けられるでしょう。

しかし、物事はそう簡単には運ばないものです ―― 経済成長は予想を大きく上回り、インフレは高止まりしており、FRBは現在の環境では利下げを急いでいません。金利は低下でなく上昇し、デュレーションの長い債券の保有者は損失を被りました。これは典型的ではなく、異例なパターンです。

いずれ経済成長が鈍化し、インフレが沈静化し、環境の変化を受けてFRBが利下げを開始すれば、投資家の行動が正しかったと証明されるかもしれません。しかし、実際にそうなるのか、なるとしてもいつのことなのか、確かなことは誰にもわかりません。一方、FRBやその他の伝統的な買い手が米国債の購入を減らすなか、米財務省は膨れ上がる財政赤字を賄うために債務の発行を増やす必要があり、利回りにはさらに上昇圧力がかかっています。

ほとんど誰もが将来の金利低下を予想し、それに基づいてポジションを構築しています。まさにそれ故、金利は低下しないのかもしれません。

十分な利回りがある質の高い短・中期満期の債券を保有し続けることをお勧めします。経済が予想通りソフトランディングする、あるいはノーランディング(インフレと金利がより高くより長く継続)が実現するような場合には、追加リスクを積極的に負う投資家にとって、クレジットへのアロケーションは利回り引き上げにつながる可能性があります。

何を知りたいか?

投資判断に際して市場参加者は、常に不完全な情報をもとに資本を配分しなければなりません。FRBの利下げと予想されているソフトランディングの実現を待つなか、新たな情報と興味深い関係性を見つけるには、今日のいい加減な見出しとお決まりの言説の先を見ることが不可欠です。

目の前にある魅力的な言説(対中小型株での大型株の大幅なアウトパフォーマンス、マグニフィセントセブン銘柄による市場集中、デュレーションの長い債券によるプロテクション)を深く掘り下げることで、こうした中途半端な真実がノイズにすぎないことが明らかとなりました。そして、まだ隠れた事実があり、発見されるのを待っています。

投資成功の鍵は、何かを知っているか否かではありません。重要なのは、新たな事柄を知るためにどこまで深く掘り下げる意欲があるかです。そうした意欲がある投資家は、市場に打ち勝つ機会を増やすことで、分散された投資ポートフォリオの構築において優位に立てるでしょう。

ということで、他の人の知らないことを知っていますか?よろしければ教えてもらえませんか?皆さん、学びましょう!