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米国のイノベーションと成長への投資

米国の大型グロース株は好調なパフォーマンスを見せていますが、その優位性は今後も続くのでしょうか?ここでは特に、革新的でクオリティの高い銘柄にはさらなる上昇余地が見込まれる理由と、アクティブ運用アプローチがいかにして長期的なアルファを獲得できるかをご説明します。

Portfolio Manager

クオリティが高く革新的なグロース企業が最も集中している国は米国です。具体的には、米国のテクノロジー企業は、世界のテクノロジー市場の時価総額の75%*を占めています。これは偶然の結果ではありません。以下に示すように、米国市場にはこうした優位性を可能にする特徴が数多くあります。

  • 比較的緩やかな規制
  • 強力な法規制と知的財産の保護
  • 最大のベンチャーキャピタル市場に支えられた起業家精神の長い歴史
  • 優秀な人材の流入と革新的なグロース企業の誕生を可能にする魅力的な報酬システム
  • 全般的に有利な税制環境

*出所:実証的分析結果

その結果、米国の大型グロース株への投資はとりわけ優れたパフォーマンスを上げてきました。過去10年程度にわたってバリュー株や国際株と比較してみても、そうした傾向は一段と顕著です。米国の大型グロース株が長期にわたって好パフォーマンスを見せてきたため、多くの投資家がバリュー株や米国以外の株の上昇が間近に迫っていると主張しています。しかし、こうした主張は、米大型グロース株の優位性を支えてきたファンダメンタルズ要因を考慮していないため、実質的な根拠が欠けていると当社は考えています。

米国のグロース企業は、市場で圧倒的な地位を占め、高クオリティかつ革新的で、大きな資産を持たなくても持続的で力強い成長を可能にするビジネスモデルを数多く提供していると当社は考えています。米国の株式市場、特にグロース株市場は、半導体、AI(人工知能)、ソフトウェア、医療テクノロジー、バイオテクノロジー、インターネット・サービス、eコマース、ロボット工学、産業オートメーションなど多くの分野において、世界で最も革新的な企業へのアクセスを可能にしています。これらの企業の多くはグローバル規模で事業を展開しており、営業レバレッジ、収益、フリーキャッシュフローの創出に改善を見せています。これにより、企業はさらなるイノベーションに再投資するための資本を増やすことが可能となり、競争優位性を高めることができます。

当社のアプローチ

ファンダメンタル・グロース&コア株式チームは、市場が短期的にどのようなスタイルを選好するかを予測しません。また、そうすることによって投資家が利益を得られるとも考えていません。投資家はクオリティが高く、米国の大手グロース企業に特化したアロケーションを行うべきです。なぜなら、米国市場のこのセクターは、キャピタルゲインを獲得できる長期的に最も大きな投資機会を提供するからです。これは他の資産クラスやスタイル、地域では簡単には見られません。

残念ながら、市場のこうしたセクターには、実証されていないビジネスモデルを持つ企業も含まれています。たとえば、高レバレッジの銘柄や急激に乱高下する可能性のあるブーム銘柄、ダウンサイドリスクがきわめて大きいバリュエーションが過剰に高い銘柄などです。したがって、こうしたセクターに投資する際は、間違いなく銘柄選別が重要となります。この点において、当社のアクティブ運用におけるファンダメンタルズ・アプローチは他のアプローチと異なります。

図表1は、当社の差別化されたアプローチを示しています。過去5年間の力強いグロース・サイクルにおける当社の米国プレミア・グロース・ファンドのパフォーマンス(緑線)を、代表的なモメンタム運用型のグロースファンド(赤線)および一般的な米国大型グロース株ファンド(青線)と比較しています。徹底的にグロースを追求するのではなく、厳格な銘柄選別プロセスを採用することにより、米国プレミア・グロース・ファンドは、サイクル全体を通じてリスクとボラティリティを大幅に抑制しつつ、他のファンドを大きく上回るパフォーマンスを上げることができました。

図表1:過去5年間の100ドルの成長

The Case for US Innovation and Growth

図表2から分かるとおり、当社は、それぞれの事業分野ですぐれた競争優位性を持つ企業を見出そうとしています。有望ではあるものの実績に乏しい新興グロース企業でも、こうした競争優位性あれば、成熟期を迎えるまでの長期間にわたって利益の2桁成長を実現できるグロース企業へと成長することが可能になります。当社は同時に、ラッセル1000グロース指数に含まれ、すでに成熟して、今後の成長が限定的な企業は投資対象にしていません。

図表2:企業のライフサイクル

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米国プレミア・グロース株式戦略

当社の米国プレミア・グロース株式戦略は、妥当な株価でクオリティの高い成長を原則とするグロース戦略です。この戦略は、こうしたカテゴリーの多くのポートフォリオで中心を占めるハイグロース・モメンタム銘柄の寄せ集めではありません。ラッセル1000グロース指数は好調なパフォーマンスを上げていますが、当社は、米国の大・中型グロース株への投資機会を最大限に活用するには、当社の厳選されたアクティブ・アプローチがより優れていると考えています。当社の戦略はスタイル・モメンタムに依存せず、ポートフォリオ保有銘柄全体が、経済および市場サイクル全体を通じて10%台半ばで複利成長していくことを目指しています。

ポートフォリオ構築:長期の投資期間を設定し短期志向の投資家が見逃しがちな投資機会を特定

ポートフォリオ構築にあたり、当社はボトムアップ型アプローチを厳格に適用し、妥当なバリュエーションで取引されているクオリティの高い2桁成長の企業を発掘しています。当社は、今後3~5年間にわたり最低でも10%超の利益成長率を確実に達成できる企業を探しています。 ほとんどのセルサイド・アナリストのモデルは平均2~3年先までしか予測しておらず、成長とリターンが自然に鈍化すると保守的な想定をしています。つまり、短期的な時間軸ではなく長期にわたり成長を持続できる企業を見出すことができれば、その企業は市場で過小評価されている可能性が高いということになります(図表3)。さらに、そのような企業を長期的なスパン(3~5年以上)で保有できれば、複利的な利益成長のメリットを活用してアルファを生み出すことが可能になります。

図表3:長期にわたる複利的成長によって生み出される投資機会

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投資機会の特定:銘柄確信度 (CQ)

このように過小評価された企業をどのように見つければよいのでしょうか?当社は、徹底的なファンダメンタルズ分析と独自モデルに加え、独自の銘柄確信度(CQ)リサーチ・フレームワークを用いて各企業のスコアを算出しています。このフレームワークは、過去の利益、利益の変動性、負債の単純な組み合わせを重視する従来型のクオリティ評価とは異なります。むしろ、将来見通しに基づくクオリティを定義し、競争優位性、経営陣に対する信頼度、資本配分戦略の妥当性、ビジネスモデルの透明性、事業推進要因のファンダメンタル・モメンタムといった定性的な要素に焦点を当てています。当社は、経験豊富なリサーチ・チーム(経験年数は平均20年以上)を活用し、詳細なCQフレームワークを用いて、こうした「ソフト要因」の評価指標を数値化しています。CQスコアが高ければ高いほど、成長の持続性に対する当社予想の確信度が高まり、複利的成長がやがて実現した際に、大幅な株価パフォーマンスの向上やアルファ獲得機会が生まれるとみています。

図表4は持続的な成長が市場で生み出すプレミアムを示しています。この例では、複利的成長の年数が長くなるに従い、バリュエーション・プレミアムは指数関数的に上昇します。当社は、CQスコアの高い企業に見られる良好なクオリティ特性が、安定的で予測可能な利益成長につながると見ています。一方、当社のバリュエーション規定により、ダウンサイド・プロテクションが設けられています。

図表4:市場は持続的成長をしばしば過小評価

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決してグロース相場を追いかけはしない

市場のバリュエーションや投資家心理が変化する時期を見極めることは、投資家にとってきわめて難しいことです。ポートフォリオ戦略の基盤となる妥当なバリュエーションの基準は、市場が「上昇」している年はベンチマークに追随、あるいはそれをアウトパフォームすることを目指す一方、市場の調整局面ではダウンサイドリスクを抑えることを目指します。この戦略は、米国の革新的で長期にわたる成長機会に参入する上で優れた方法であるだけでなく、市場が混乱する際でも、グロースとイノベーションを追求する他のファンドよりも安全なポートフォリオを構築できると当社は考えています。これは、市場の認識や金利、あるいはその他の条件が変わった場合に大幅に下落する可能性のある、赤字の新興企業を多数保有するファンドが特に当てはまります。

当社の集中型ポートフォリオは、過去において、ラッセル1000グロース指数と同水準またはそれを上回る3~5年間の1株当たり利益(EPS)成長率を実現してきましたが、ポートフォリオ全体の株価収益率(PER)はベンチマークを若干下回っています。プレミア・グロース株式戦略はここ数年、ベンチマークと同程度のリスク(リターンの標準偏差)およびベータを示しており、リスクとボラティリティが同種の他ファンドよりも相対的に低いことを反映しています。加えて、当社は長期保有を基本としていますが、将来のリスク・リターン特性に基づき保有銘柄のウェイトを増減させてポジションの大きさを調整し、リスク管理を行っています。

革新的で長期的な2桁成長銘柄のポートフォリオ

要約すると、当社は、ポートフォリオの長期にわたる複利的な成長の実現を目標としています。それはイノベーション、ブランド力、その他無形資産が強力な競争優位性を生み出し、10%台半ばで持続的に成長するとともに、投下資本に対して一貫して高水準のリターンを生み出す優良企業に投資することで実現できます。また、妥当なバリュエーションで取引されている株式に焦点を当てることで、成長のために過剰なコストをかけないようにしています。当社のアプローチは、超過リターンを期待できる長期的な勝ち組銘柄で構成されるポートフォリオを構築すると同時に、他の米国グロース株ファンドよりも優れたダウンサイド・プロテクションを提供することを目標にしています。このアプローチは、徹底したファンダメンタルズ分析、クオリティの重視、およびバリュエーションの規律によって支えられています。

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