11月の金市場は大きく変動し、前月比3.40%マイナスの1オンス2,651.05ドルで取引を終えました。米国大統領選挙をめぐる不透明感が解消し、リスク資産の上昇とマクロ・ボラティリティ・ヘッジ取引の減少につながりました1。
トランプ次期大統領の関税政策によってインフレが上昇する可能性があるにもかかわらず、金はリスクオン/リスクオフの変化に影響を受け、選挙直後には2ヵ月ぶりの安値となる2,536ドル前後で取引されました2。
金はその後、ロシアとウクライナの戦局をめぐって地政学的緊張が高まるなか、月後半に持ち直しました。実際、11月第3週には週間ベースで2023年3月以来の大幅な上昇を記録しました3。また11月最後の10営業日には、米国の金の上場投資信託(ETF)に10億ドル超の資金が流入しました4。
短期的には、たとえ資本市場全体にリスクオン・ムードが広がっても、地政学リスクの高さと金融政策の動向によって、金に対するセンチメントは引き続き支えられるでしょう。
長期的にも、金の見通しは明るさを維持しています。中央銀行による購入はネットベースで2023年並みになる見込みです。中国とインドの需要も拡大を続けています。さらに、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げが予想されていること、加えて新たな財政政策で連邦財政赤字が増加し、米国の債務プロファイルが悪化する可能性があることから、米ドルや米国債に対する金の魅力は高まる公算が大きいでしょう(図表1)。
フロー:世界の金ETFによる金の保有額は11月に-1.0%、推定26.61トン減少しました。ニューヨーク商品取引所(COMEX)における金先物の投機的ネット・ポジションは11月には19万5,173枚で取引を終え、6ヵ月移動平均も2020年4月以来の高水準となりました。ロング・ポジションの期日延長(ロール)の継続ならびに高水準のETF需要は、マネーマネージャーが金に対して強気を維持していることを浮き彫りにしています5。
ファクター:14日RSI(相対力指数)が月初に「買われすぎ」の水準近辺で取引されていたため、当月は調整が予想されていた可能性もあります6。しかし、それよりも、選挙前の不透明感にもとづくポジショニングを反映していた可能性の方が高いようです。14日RSIは約50で月を終えましたが、金のスポット価格は選挙直後の売りが一巡すると、月半ばに100日移動平均から反発しました。金は11月に50日、100日、200日移動平均を上回って取引を終えました。
ファンダメンタルズ:金の総需要(OTC投資を含む)は前年同期比5%増の1,313トンと、第3四半期としては過去最高記録となりました。総需要は金額ベースでは前年同期比35%増となり、史上初めて1,000億ドルを突破しました7。そして上述したように、11月最後の10営業日には金ETFに10億ドル超の資金が流入しました8。