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トランプ勝利に対する市場の反応を解読する

米国の選挙結果を受けて市場のボラティリティが高まっています。トランプ氏の勝利は債務、財政赤字、インフレリスクにどのような影響を与え、そして株式市場の今後の動向はどうなるのでしょうか。

Chief Investment Strategist

米大統領選の結果を受けて、米国債30年利回りは24ベーシスポイント(bps)上昇し4.68%となり、5月以来の高水準を記録し、2020年3月以来の最大の上昇幅となりました。この動きは、主にトランプ大統領が表明した関税や移民管理に関する政策がインフレを引き起こすだろうという投資家の予想を反映しています。

以下に示すMerrill Lynch Option Volatility Estimate(MOVE指数)は、国債のボラティリティを計測しています。選挙結果発表日の急上昇により、ボラティリティの数値は2021~2022年に見られた水準と同程度のレベルに高まっています。当社のアクティブ債券グローバルヘッドであるMatt Nestによると、MOVE指数がパンデミック中に見られたレベルまで上昇したことは驚くべきことではありません。市場のさまざまなリスクに対する認識が極端なものから別の極端なものへと移り変わる中で、長期利回りは1年以上4~5%の間で推移しています。明らかに、選挙の結果は、特に債務、赤字、インフレリスクに関する最悪の事態に対する市場の恐怖を再燃させました。しかし、基調的な成長とインフレの傾向に対して現在の利回り水準は、引き続き投資家にとって合理的なリスクプレミアムを提供しています。

今後数年間のこうした傾向の進展は重要ですが、決して単純なものではありません。当社は引き続きデュレーションをオーバーウェイトとし、中期国債に焦点を当てる一方で、債務水準の上昇とインフレ懸念に関連する潜在的なテールリスクを認識し、より長期の国債は避けています。

図1:米国債のボラティリティが急上昇¹

Figure 1: Volatility in Treasuries Jumps

インフレはさらに上昇するのか?

多くの政策専門家は、関税は一時的な価格上昇を引き起こすだけだと指摘しています。この考え方に立つと、トランプ大統領が提案した関税を施行した場合、それに伴うインフレ上昇は、永続的な上昇ではなく、一時的なショックとなるでしょう。その後も価格が上昇し続けるかどうかは、米国がそれらの商品を国内生産(または引き続き優遇貿易相手国)で代替できるかどうか、また、それにはいくらのコストがかかるかによります。

インフレ圧力に上限があると考える理由は他にもあります。人工知能(AI)の支持者は、AIやその他の技術革新がもたらす可能性のある効率性、つまり将来的に商品の製造コストが下がる可能性を指摘しています。また、米国は国内の天然ガス生産と、よりクリーンなエネルギーへの段階的な移行を通じて、石油(歴史的にインフレの大きな原因)への依存度を下げ続けており、これは移行完了後にはエネルギー価格を低下させることになるでしょう。

インフレ圧力とデフレ圧力は、リセットされつつあるシーソーや振り子のように、しばらく不透明になるとみられます。そのため、どちらが勝利するかは、しばらくははっきりしないかもしれません。

株式市場の見通し

少なくとも、株式市場の今後の見通しはより明確になっています。最近の経済指標から判断すると、現在ソフトランディングの真っ最中にあるように見られますが、歴史的にはソフトランディングの環境は株式市場を後押しする傾向があります。米国企業収益の回復はこの健全な状況に拍車をかけ、減税・雇用法(TCJA)の延長などのトランプ政策は株式市場にとって追い風を継続する可能性が高いと考えられます。以下に、政権期間毎の株式市場のリターンのばらつきを示すため、大統領在任期間中のS&P 500指数の年平均成長率(CAGR)を示しています(図2)。

図2:大統領政権期間中のS&P500の年平均成長率(CAGR)比較

Figure 2: S&P 500 CAGR Comparisons During Presidential Periods

共和党政権下でのS&P500指数の伸びの足かせとなったのは、ニクソン大統領とブッシュ・ジュニア大統領の両政権下でそれぞれ2度の景気後退を経験したことによります。トランプ大統領の最初の大統領時代は株価が好調で、ソフトランディングの見通しを考えると、景気後退の可能性は極めて低いと考えられます。

選挙結果のより詳しい分析については、当社の最近の記事「米国選挙のゴールが見えてきた:見通しを再考する (ssga.com)」をご覧ください。

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