投資家センチメント:機関投資家の債券フローと保有残高
このデータは、数万におよぶポートフォリオから投資家行動の傾向を捉えたもので、世界の債券発行残高のおおよそ10%強を捉えていると推定されます。
多くの経済圏で利下げが加速するなか、米国の成長率が引き続き上振れしていることから予想以上にインフレが根強く、利回り低下は後手に回っています。米連邦準備制度理事会(FRB)が9月に利下げを表明して以来、10年物米国債利回りは100ベーシスポイント(bp)上昇しています。また、経済のダイナミクスは国によって異なるものの、米国金利の見直しは、他の先進国および新興国ソブリン債のほとんどに売りのきっかけをもたらしました。このため、第4四半期の債券市場は大半が下落基調で終わったものの、高利回りの資産クラスはスプレッド拡大の最悪の事態を乗り切ることができました。
チャートが示すように、長期投資家のソブリン債への資金流入は、当四半期末にはほとんどの地域で全般的に低調でした。米国債は依然として売り越しが続いていますが、投資家が押し目買いを始めている兆しがみられます。満期レベルで米国債の動きを見ると、ショートエンドへの関心が高い一方、ロングエンドは四半期を通じて中立に向かっています。同様のことはほとんどの欧州の国債市場には当てはまらず、欧州の国債市場では、昨年ECBが4回の利下げを実施して以降、投資家の資金流出が続いています。投資家の関心が再び高まっているセクターには、社債やモーゲージ債(MBS)など高水準のインカムや適度なデュレーションのエクスポージャーから恩恵を受けているものもみられます。
図表1:Q4フローおよひ保有

底値を探る米国債
FRBの金利正常化計画は、成長率とインフレ率の上昇によって風前の灯となり、米国債の投資家にとって厳しい年末となりました。次期政権が打ち出す関税政策や移民政策による潜在的なインフレの影響は、債券投資家が抱える懸念に火をつける結果となりました。米連邦公開市場委員会(FOMC)は理論上、未定の財政政策を金利見通しに織り込むことはできませんが、利下げを開始してすぐにタカ派へ転換したことは、好調な経済と非伝統的な政治環境が生み出した不確実性を物語っています。例えば、9月に50bpの利下げを決定して以来、FRBの2025年の金利見通しは、四半期ごとの利下げから半年ごとの利下げ予想に変わりました。この変更は市場の予想とほぼ一致していますが、9月の大幅利下げで見せた断固たる姿勢を一変させるものでした。本稿執筆時点では、市場は今年あと1回の利下げを確信しているにすぎず、その誤差はかなり狭い範囲に収まっており、政策正常化のプロセスがすでに終了したというシグナルに容易に変わる可能性があります。
金利はその後上昇圧力にさらされ、FRBが利下げを開始して以来、10年債利回りは100bp上昇しました。投資家の資金フローはこうした懸念を反映し、8月には売り越しポジションに転じましたが、それ以降は50パーセンタイルを下回る水準で推移しています。直近では、全体の資金フローが40%パーセンタイル台に戻ったことから、売りが減速しています。満期レベルから指標を見ると、リアルマネーの投資家は、一時的にデュレーションに回帰しつつある一方、ショートエンドの投資家の関心が依然として最も高いことがわかります。しかし、カーブの中間部分は引き続き短中期的に売り越しとなっており、インフレの行方や潜在的な発行動向に対する懸念が残っていることを示唆しています。
図表2:米国債のフローが選択的な 押し目買いを見せ始める

先進国債券、新興国債券はともに低調なフロー
利回りの上昇は決して米国債市場に限ったことではなく、12月のグローバル総合インデックスは2%を超える下落となり、米国総合インデックスおよび米国債インデックスの損失をともに上回りました。確かに、先月FRBが利下げを実施して以来、10年物米国債利回りが30bp上昇しており、ほとんどの先進国ソブリン債市場や主要な現地通貨建て新興国市場でもほぼ同様の動きとなりました。これらの債券市場の大半でイールドカーブもスティープ化していますが、これはタームプレミアムの上昇とインフレ期待の高まりによるものとみられ、実質利回りの上昇がスティーブ化を明らかに牽引している米国とは対照的です。
債券エクスポージャーの積み増しを控える傾向は、当社の資産配分データからも明らかです。債券エクスポージャーの水準は世界金融危機(GFC)以降最低となり、投資家は株式エクスポージャーのオーバーウエイトを維持しています。投資家の資金フローの観点からは、当四半期の初めに新興国市場(EM)ソブリン債への資金流入が回復の兆しを見せていましたが、その後反転し、EMソブリン債と先進市場ソブリン債への関心は現在、上位4分の1位にとどまっています。ただし、最近の米国債への資金流入が引き続きプラスであれば、先進国債券への資金流入は引き続き安定的に推移するとみられます。また、最近の傾向は、先進国市場の資金フローは改善しているものの、依然として低水準にとどまっています。一方、新興国市場の指標はすべて、当社が追跡している4つのEM地域全体で資金フローが減速していることを示しており、短期的な指標に基づく売り越しが目立っています。新興国経済にとって、広範囲にわたる関税がとりわけ難しい問題になる可能性があることから、トランプ次期政権の優先事項がより明確になるまで、この傾向は続くとみられます。
ハイイールド債へのリスク選好の高まり
ハイイールド債は、ソブリン債市場よりも株式市場との相関関係が強い場合が多いです。そのため、ハイイールド債が昨年、主要債券資産クラスの中で最も堅調なパフォーマンスを示したことは驚くには当たりません。平均満期5 年未満のハイイールド債は、他の多くの債券資産クラスを苦しめたデュレーションに起因するボラティリティの多くを回避することができました。一方、クレジット・スプレッドは最近、10年以上前の水準から回復したものの、ハイイールド債全体の平均利回りは2024年上半期に7.8%を超えた後、依然として7%を上回っています。借り換えコストの上昇に対する懸念も、買い手やプライマリー市場の売り手に動揺を与えておらず、スプレッドの縮小や全体的な利回りの低下にもかかわらず、発行額は前年比60%増となっています。
ハイイールド債の投資家は、スプレッドが依然として10年来で最もタイ トな水準に近いことから、ほとんどのリスク投資家が抱いているようなバリュエーションに対する疑問に直面しています。投資家の資金フローでは買いが続いており、フローは過去1ヵ月間着実に増加し、足元の水準は65パーセンタイルとなっています。これは、FRBが利下げサイクルを開始すると予想されていた昨年春以来、最も力強いフローとなっています。また、FRBの見通しが明確にタカ派へ変わりましたが、このシフトのほとんどは経済見通しの改善に基づいています。債券へのアロケーションは全体として、歴史的な低水準に近い水準にとどまっています。景気後退の可能性が依然として低いことから、安定した高いインカムが引き続き投資家のフローを支えています。
図表4:ハイイールド債へのフロー改善
