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Bond Compass

投資家センチメント:米国債券に対する需要は力強さを維持

このデータは、数万におよぶポートフォリオから投資家行動の傾向を捉えたもので、世界の債券発行残高のおおよそ10%強を捉えていると推定されます。

第1四半期の経済指標は全体的に予想を上回る好調が続きましたが、第2四半期に入って、米国の経済データにはばらつきが見え始めています。しかし、消費活動に軟調な兆候が散見される中、インフレ率はおおむね予想通りに推移しており、米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げが間近に迫っているとの見方が強まることはありませんでした。

それどころかデータにばらつきが見られたことで、利下げサイクルのタイミングと利下げ幅をめぐって不確実性が増したようにも思われます。さらに、米大統領選という難題も加わり、米国債券に対する機関投資家の購入意欲への重石となっています。

米国債への資金流入は中立水準に向かって縮小し、社債への流入は大幅に減少しています(図表1)。米国債券に対する需要が減速する一方で、新興国ソブリン債に対する需要は5月末にかけて急増し、新興国ソブリン債への5月の資金流入は2018年2月以来の最高水準に達しました。

その後、新興国債券への流入も落ち着き、今では新興国と先進国の債券需要は、全体として同じような状況にあります。また、欧州ソブリン債に対する需要は、政治的不確実性が続いていること、一部の中央銀行が利下げを開始したことなどを背景に、ばらつきが見られます。

米国債への資金流入が縮小

米国債に対する機関投資家の需要は四半期を通じて減退し、20日間の資金流入は68パーセンタイル値まで落ち込みました。流入額は、2023年春の地方銀行の破綻をきっかけに高まった、米国債のセルオフ以来の低水準に減少しており、過去1年間の大半で90パーセンタイル値を上回る水準を維持していたことを考えると、これは注目に値します。実際に、米国債への資金流入は第1四半期末時点でさえ、94パーセンタイル値の水準にありました。この間、経済成長率やインフレ率は堅調さを示していましたが、FRBのメッセージは極めてハト派的と解釈され、利下げが近づいているとの投資家の確信が揺らぐことはありませんでした。米国債需要が第2四半期に落ち込んだ理由は、FRBのトーンが四半期を通じて急速にハト派色を弱めていったからに他なりません(図表2)。

米国債への資金流入を主な年限別に詳しく見ると、米国債への流入減少は、2年物、5年物、10年物で一貫して見られます。ただし、流入減少が最も顕著だったのは10年物で、第2四半期初め時点の97パーセンタイル値から、四半期末には13パーセンタイル値まで急低下しました。同様に、長期的な政策は依然として引き締め的であることから、企業の底堅さに対する投資家の信頼が低下していることを受け、米国社債への資金流入も98パーセンタイル値から現在は33パーセンタイル値と大幅に低下しています。

Figure 2: Dovish Fed Driving Treasury Demand

インフレ・プロテクションに対する需要にはばらつきがある

3月の消費者物価指数(CPI)が予想を上回ったことを受け、インフレ・プロテクションに対する機関投資家の需要は第2四半期の初めに急増しました。その後、4月と5月のCPIは予想通りまたはわずかに予想を下回る展開となり、米物価連動国債(TIPS)への資金流入は35パーセンタイル値まで再び落ち込みました。

TIPSへの資金流入を主な年限別に見ると、インフレ・プロテクションに対する需要が最も落ち込んだのは2年物でした(図表3)。2年物米国TIPSへの資金流入は、4月の98パーセンタイル値から19パーセンタイル値まで低下しました。一方、5年物米国TIPSへの資金流入は、第1四半期末時点の8パーセンタイル値から62パーセンタイル値へと上昇しました。10年物米国TIPSへの資金流入は5年物よりやや低く、50パーセンタイル値付近で推移しています。TIPSに対する需要が年限によってばらつきがあることは、人口動態や債務の持続可能性といった問題をめぐって不確実性が高まり、活動が緩やかになるのに伴って、機関投資家が短期的なインフレ見通しを楽観視していることを示唆しています。こうした問題は5年後や10年後まで、価格上昇が続くことに対するリスクとなっています。

政治的な不確実性の下での欧州債券に対する需要

その他の先進国のソブリン債市場では、第2四半期中に欧州で繰り広げられた政治ドラマに対するリアルマネーの反応が、行動データから明らかになりました。フランスのマクロン大統領による解散総選挙で不確実性が高まり、10年物フランス国債とドイツ国債のスプレッドは最近、30ベーシスポイント(bp)近く拡大しました(図表4)。

とはいえ、議会解散をきっかけとしたフランスの債券に対する機関投資家の需要後退は、短期物に限定されているとみられます。確かに投資家は、どの欧州債券のエクスポージャーを増やすかという点で慎重になり、選択的視点を強めています。2年物フランス国債への資金流入が第2四半期初め時点の64パーセンタイル値から24パーセンタイル値へ低下した一方で、2年物ドイツ国債への資金流入は加速し、イタリア国債も買われています。しかし、10年物フランス国債への資金流入は第2四半期を通じて一貫して増加しており、リアルマネーの意思決定においてフランスの財政リスクをめぐる長期的な懸念は、現時点でほとんど織り込まれていないことを示唆しています。10年物イタリア国債への資金流入も、ここ数ヵ月で同様に増加していますが、10年物ドイツ国債に対する需要は急激に落ち込んでいます。

Figure 4 Investor Sentiment

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