グローバル債券のETF(上場投資信託)市場は上場銘柄数2,229本にまで成長し、投資家が多様なエクスポージャーを選択できるようになったことで、債券市場における取引の集中化と透明性の改善が進みました1。
債券ETFのもつユニークな特性により、投資家は以下を実現できます。
コスト低減。世界的に見ると、債券ETFの手数料は同等のミューチュアルファンド(日本では投資信託のような金融商品)の手数料を総じて大きく下回ります(手数料の中央値は、それぞれ0.18%、0.72%)2。発生するコストの差は、特に長期にわたって複利で運用した場合、投資成果に大きな影響をもたらす可能性があります。
流動性の改善。ETFには盤石なセカンダリー(流通)市場があるため、投資家は市場の流動性を利用し、債券の個別銘柄に直接投資するよりも容易に、分散されたエクスポージャーを構築できます。また投資家は、個別銘柄ではなくETFのポジションをセカンダリー市場で売却することで、様々な資産クラスにエクスポージャーを迅速かつ効率的に再配分する、あるいは流動性ニーズを満たすことが可能です。ミューチュアルファンドの取引は通常、毎日1回、1日の終わりに行われますが、債券ETFは日中に売買が可能です。
透明性の向上。ETFはインデックス連動型、アクティブ運用型のいずれも、保有銘柄とバリュエーションを日次で報告しているため、ポートフォリオの精査とリスク管理のための要因分析を日次で実施する投資家にとって、透明性の向上につながります。
ミューチュアルファンドの報告頻度はこれより少なく、通常、月次または四半期ベースです。つまり、債券ミューチュアルファンドで資産配分が変更されても、持分保有者が知るまで数ヵ月かかる場合があるということです。
ターゲット・デュレーション。ETFはイールドカーブに沿って、期間構造全体を正確に網羅しています。そのため投資家は、市場の観測あるいは顧客の負債に合わせてポートフォリオの金利リスク(デュレーション)を微調整できます。
クレジットリスクを調整。投資適格クレジットから、クロスオーバー・デット、シニアローン、ハイイールド債まで、投資家はETFを通じて、ポートフォリオのクレジットリスク量を容易かつ透明性のある形でコントロールできます。
2002年に誕生した債券ETFの成長に弾みがついたのは、世界金融危機後です。多くのディーラーがバランスシートを圧縮して現物市場での取引モデルを自己資金によるプリンシパルベースから、エージェンシーベースへと移行させる中、価格と保有銘柄の透明性ならびに取引の容易さがETFの成長を促しました。
債券ETFを通じて、以下が可能になります。
インデックスを用いたアクティブ運用。多種多様なETFを用いて正確な利回り、デュレーション、スプレッド、セクターで最適化されたポートフォリオを構築する、あるいはブルームバーグ・グローバル総合インデックスのような広範な市場インデックスのセクター別ウェイトを単純に変更することにより、投資家は幅広い債券サブセクターにわたって、カスタムポートフォリオを構築することができます。
アクティブ運用の追求。アクティブETFは、アクティブな銘柄選択とリスク管理双方のメリットを享受できることから、世界中の投資家が取り入れつつあります。
ベータの再現。流動性のあるETF商品の拡大は、キャッシュを株式化する、あるいは積みあがった利払いの再投資を容易にする、より適応性の高いベータ・ソリューションをサポートしています
トレンドに合わせてポートフォリオを調整。投資家はマクロ、テクニカル、ファンダメンタルズのトレンドに基づき、資産クラスを効率的に組入れまたは除外することによってアルファを追求できます。たとえば、金利が低下して米ドルが下落する環境では、新興国市場の現地通貨建て債務に資産をシフトすることが考えられます。
以上の他にも、ETFは現物による設定/交換プロセスという特性により、ポートフォリオにおいて次のような様々な役割を果たします。
資産の移管。ETFは幅広い証券を保有しているため、個別債券を保有する大規模投資家は、現物の設定/交換プロセスを利用して、バランスシート上の特定の原債券のETFへの組入れ・除外を効率的に実施できます。
トランジション・マネジメント。資産運用会社が流入した資金を受領した場合、新たな資産運用会社を探しつつエクスポージャーを維持するための一時的な保管場所として、インデックス連動型債券ETFを使うことができます。新たな戦略が決まれば、投資家は指定参加者(AP)経由でETFの持ち分を解約し、交換プロセスを通じて債券の個別銘柄を受け取ることができます。
在庫の集約。セルサイドである証券会社は、トレーディング・デスクが保有する在庫の管理に債券ETFを利用することができます。トレーダーのポジションを統合し、ETFを設定して自身のバランスシートから債券を切り離し、その後その受益証券を市場で売却することが可能です。
債券ETFは、トータルリターン・スワップやクレジット・デフォルト・スワップ指数の代替手段を提供します。また、リスク低減、インカム創出、あるいはより高度な戦略を追求するために、債券商品を対象とするETFオプションの想定元本建玉を利用することも可能です。