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2025年の3つのサプライズ:一方通行の投資家センチメントに打ち勝つ

「自分が何者か知らないなら、株式市場はそれを発見するには金のかかる場所である」

– ジョージ・グッドマン

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Chief Investment Strategist

力強い市場パフォーマンスはしばしば、景気や資本市場のトレンドが翌年も同じように続くと思い込む投資家の危険な行動傾向を助長します。リスク資産の傑出したパフォーマンスが数年にわたって続いたことで、2022年の暴落は忘れられない記憶として脳裏に焼き付いています。S&P500指数は過去6年のうち5年で素晴らしいリターンを投資家にもたらし、同指数の過去5年間の年率リターンは14.5%と、過去10年間の年率リターンを1.4%ポイント上回っています1

2024年最大のサプライズは、投資のサプライズがそれほどなかったことかもしれません。米国株はまたしてもマグニフィセント・セブン銘柄に牽引され、他の先進国株や新興国株に対する優位性を維持しました。金利は高水準で変動し、ブルームバーグ米国総合債券指数のような従来の債券ベンチマークのパフォーマンスに重しとなりました。一方、債券アロケーションの中では、クレジット投資がはるかに安定した高水準のトータルリターンをもたらしました。

2025年はどうでしょうか。ほとんどのエコノミストは年内の景気後退入りを予想していません。失業率、インフレ率、10年物米国債利回り、そして原油価格はすべて、年初とほぼ同水準で年末を迎えると予想されています。こうした見通しを受け、投資家は現状維持のスタンスを取り、今うまくいっていることに倍賭けしようとしています。まさに参照点依存バイアスの典型的な例です。しかも、米ドル、金、ビットコインはいずれもこのまま上昇し続けると予想されています。

株式に関しては、市場関係者の多くが、ハイテク企業の堅調な利益成長に牽引された米国の大型株が、小型株や海外の先進国株および新興国株を引き続きアウトパフォームすると自信を持って予測しています。一方で債券投資家は、予想を上回る高金利や根強いインフレにより、今年も厳しい年になると覚悟しています。歴史的にタイトなスプレッドにもかかわらず、利回りが上昇していることに加えてデフォルト率が異例なほど低いことから、債券投資家はますます多くの資本をクレジット投資に振り向けたいという誘惑に駆られています。

一方通行のセンチメントがサプライズ機会の鍵を握る

明らかに一方通行の投資家センチメントは、資本市場にとって重要なサプライズの材料となります。

過去9年間にわたって毎年1月に行ってきたように、私はこの見解をベースに、すでに多くの悪材料が織り込まれて人気はないもののバリュエーションが魅力的な資産に着目した上で、投資家にとっての3つのサプライズについて予測を立てました。過去9年間で私の予測が的中したのは27回中15回(56%)と精度はまずまずですが、これが実力かまぐれかを判断するには27回という観察回数は少なすぎます。より重要なことは、結果は常に非常に不透明ですが、私の大胆な予測が投資家に役立つとすれば、一貫性と規律のある再現可能な投資プロセスは投資家にコントロールできるということを毎年思い出してもらうことです。

10回目となる今年、自身のサプライズ予想の公式を適用して特定した2025年の3つのサプライズは以下の通りです。

  1. ヘルスケアセクターがS&P500指数をアウトパフォーム
  2. 米連邦準備制度理事会(FRB)は予想以上の利下げを実施
  3. 金価格が3,000ドルを突破

ヘルスケアセクターがS&P500指数をアウトパフォーム

2024年、ヘルスケア・セレクト・セクター指数はS&P500指数を22.4%ポイントもアンダーパフォームしました2。この大幅なアンダーパフォームの結果、ヘルスケアセクターに特化した上場投資信託(ETF)から74億ドルもの資金が流出しました。11セクターのうち、ヘルスケアETFからの資金流出は突出して最大でした3

ストラテガス・リサーチ・パートナーズによると、S&P500指数におけるヘルスケアセクターのウェイトは25年ぶりの低水準付近にあります4。ほぼ同じ期間に、米国の総医療費は2000年の1.4兆ドルから2023年は4.9兆ドルと、3倍以上に増加しています5。ところが、米国人は医療制度の現状にかつてないほど不満を感じています。

ヘルスケアセクターをめぐるこうした悪材料により、バリュエーションが魅力的で不人気な銘柄への投資機会が生まれ、パフォーマンスに上振れのサプライズが起こる機が熟しています。

ヘルスケアセクターの株価収益率(PER)は、S&P500指数に対して20%以上のディスカウントとなっています。しかし、今後3~5年で同セクターは、S&P500指数を上回る1株当たり利益(EPS)の成長が見込まれています6。投資家センチメントがわずかに変わりつつある兆候として、ヘルスケアセクターの中で株価が20日高値を付けた銘柄の割合が1月22日に急上昇し、2023年以降で最も高くなりました7

ヘルスケアセクターは昨年、多くの点でロバート・ケネディ・ジュニア氏に翻弄されました。とはいえ、投資家の反応は過剰だったかもしれません。意外なことに、1981年のレーガン政権以来、共和党政権の最初の年は必ず、ヘルスケアセクターはS&P500指数をアウトパフォームしています8。パフォーマンスが好転する可能性をさらに後押しする材料として、ヘルスケアセクターは大統領就任初年度にS&P500指数に対してセクター別で2番目に高いアウトパフォームを記録しています。アウトパフォームが最も高いのは金融セクターです9。そして、トランプ政権の医療制度改革はさほど悪くない可能性があります。

最後に、多くの構造的な追い風がヘルスケアセクターのパフォーマンスを押し上げる可能性があります。先進国は人口の高齢化に直面しています。その結果、医療機器・サービスへの支出は増加します。人々の寿命が延びれば、医療費のうち予防医療に充てられる割合が高まります。さらに、人工知能(AI)を活用しながら、がん、心臓病、アルツハイマー病といったさまざまな病気に対する画期的な医薬品の開発が続けられるはずです。

1つ目のサプライズとして、2025年はヘルスケア・セレクト・セクター指数がS&P500指数をアウトパフォームすると予測します。

FRBは予想以上の利下げを実施

市場関係者は、2025年に計38bpの利下げを織り込んでいます10。これは、25bpの利下げ約1.5回分に相当します。このことは、投資家が年内に少なくとも1回は利下げが行われると確信する一方で、2回目についてはそれほど確信していないことを示唆しています。予想を上回る経済指標、根強いインフレ、トランプ政権の今後の政策による影響への不安といった要素が投資家の期待を弱めています。

パウエルFRB議長は11月7日の連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で、金融政策の適切な道筋を決定するに当たり、FRBはトランプ政権がどのような政策選択を行うかを推測、憶測、想定などをしないと力説しました。しかし、6週間後の12月18日にFRBはまさにそれを行い、経済見通し(SEP)の中で2025年の利下げの回数を4回から2回に引き下げたのです。

2024年にFRBは3回の利下げを実施し、フェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標レンジを9月中旬以降で100bp引き下げました。不思議なことに、FRBが4ヵ月前に利下げを開始して以降、10年物米国債利回りと実質金利はいずれも約100bp上昇しています11。金利の上昇は、長期金利の方向性に対してFRBが影響力をほとんど持たないという事実を浮き彫りにしています。

1995年、2001年、2007年、2019年にFRBが最初の利下げを実施してから3ヵ月後に金利は低下し、債券価格は長期債を含めて上昇しました12。FRBの利下げ後に金利が上昇するという現在の異常な状況を受け、12月上旬以降、資本市場のボラティリティが急速に高まっています。投資家のセンチメントとポジショニングは、債券アロケーションの中で長期債にはシフトしない意向が示唆されています。

10年物米国債利回りは、成長見通し、インフレ見通し、タームプレミアムを反映します。9月中旬以降、これら3つの要素がそろって金利を押し上げています。しかし、この状態は長続きするのでしょうか。

アトランタ連銀のGDPナウは、2024年第4四半期のGDP成長率を年率3%と予測しています。これはトレンドを大幅に上回る成長率です。FRBが12月18日に発表した経済見通しは、2025年のGDP成長率をわずか2.1%と予想しており、成長率は大幅に鈍化する見通しです。今年は経済成長が減速し、利回りに下方圧力がかかる公算が大きいとみられます。

インフレ率は低下

最近の経済データを受け、インフレ再燃に対する投資家の懸念は和らいでいます。予想以上に過熱していた2024年第1四半期のインフレ率は、まもなく前年同期比のデータから外れます。その結果、2025年第1四半期のインフレ率は市場に優しい数値となるでしょう。帰属家賃(OER)は消費者物価指数(CPI)の中で大きなウェイトを占めますが、動きが鈍いことで知られています。そのOERもようやく冷え込みの兆候を見せ始めました。労働統計局が四半期ごとに発表する新規テナント賃料指数はOERを先行する傾向があり、第4四半期には急落しました13

2025年のインフレ率は予想を下回る可能性があり、FRBにとっては予想以上の利下げ余地が生まれるでしょう。4.25~4.5%という足元のFF金利の誘導目標レンジは依然として、FRBが用いるインフレ指標を大幅に上回っており、それも追加の利下げ根拠となります。実質政策金利をインフレ率プラス約100bpの水準にすることがFRBの最終目標であれば、2025年の利下げは簡単に3回に達し、75bpの利下げも十分にあり得ます。

米国政府の財政健全性は改善する見込み

トランプ政権の政策案は基本的に矛盾しています。経済成長やインフレ率を促進するものと抑制するものがあります。タイミング、順序、規模、経済への影響はいずれも不透明です。FRB関係者は、パウエル議長が述べたように、将来の政策について推測、憶測、想定をするべきではありません。

トランプ政権が、すでに信頼できない水準に達している財政赤字をさらに拡大させるような政策を打ち出さなければ、米政府の財政健全性は今年度中に改善するはずです。個人および法人からの税収は、現時点での議会予算局(CBO)の予測を上回る見通しです。インフレが緩やかになるにつれて給付金支出は減少しています。金利コストの上昇は長期的課題として残りますが、FRBの利下げ、正常なイールドカーブ、量的引き締め終了の見込みにより、米財務省の財政能力は高まると思われます。

債務上限を超えた場合、政府は政府預金口座(TGA)の取り崩しを余儀なくされ、経済に7,000億ドルの流動性が注入され、金融環境が緩和されます。その結果、今年度の財政赤字は3,000~4,000億ドル改善し、同時に市場では金利上昇とドル高が緩和されるでしょう。

2つ目のサプライズとして、FRBは2025年に少なくとも2回、場合によっては3回以上の利下げを実施すると予測します。

金価格が3,000ドルを突破

金価格は昨年、終値で史上最高値を40回以上更新し、25.5%のリターンを投資家にもたらしました14。2019年以降堅調に推移する中で、近年は特に力強いパフォーマンスが続いていることから、複数のセルサイドの調査会社が2025年の金を強気と見ています。

金は近年、分散投資ポートフォリオにおいてドローダウンを回避しリターンを強化する上で重要な役割を果たしています。2022年には金が脚光を浴びました。株式と債券が2桁の下落に苦しむ中、金は年間を通じて価値を維持し、分散投資の力を実証しました。2023年には金価格は約13%上昇し、反発した株式にはリードを許したものの、債券に対しては大幅なアウトパフォームとなりました。そして2024年、金は25%上昇し、株式と債券の両方を圧倒しました15

では、2025年に金価格が3,000ドルを突破することが、なぜサプライズになるのでしょうか。

金にとって歴史的な逆風は2025年も続くとみられます。市場関係者はドル高が続くと予想しており、これは金にとって典型的な逆風です。金利は高止まりする可能性が高く、FRBウォッチャーは年内の利下げ回数は少ないと予想しています。金はインカムを生み出さないため、金利上昇は金にとって逆風です。

ここ数年は力強いパフォーマンスが続いていましたが、2025年も金価格を押し上げ続ける明らかなカタリストはありません。消費者が使用する最終製品における金の工業用途は以前からそれほど多くはありません。金価格の上昇に伴い、宝飾品需要と中央銀行による購入は緩やかになると思われます。ここ数年の金価格を押し上げてきた最大の要因は、中国をはじめとする各国中央銀行が米ドル準備の分散を図る目的で金を購入したことでした。

昨年は終値での史上最高値を40回以上更新し、過去5年間の年率リターンは11.5%に上りますが16、投資需要としての金は驚くほど低水準にとどまっています。世界のETF業界には2024年に1兆1,500億ドルの資金が流入しましたが、そのうち金ETFへの流入額はわずか16億ドルでした17

多くの投資家は、分散ポートフォリオの投資対象として金を保有することに依然として懐疑的です。金はインカムやキャッシュフローを生み出さず、投資家が割引キャッシュフローモデルを用いて本質的価値を計算することは不可能です。金のパフォーマンスを説明すること(その時になぜそうなったか)が時に難しいことも、投資ポートフォリオに金を組み入れることに消極的な一因となっています。

しかし、ドル高と10年物米国債利回りの上昇はピークに達している可能性があります。今年はどちらも長期にわたって弱含むと予想されます。地政学的リスクに加え、金融・財政政策の構造的転換も金見通しを押し上げるとみられます。各国中央銀行による購入は、年間を通じて金価格を下支えし続けるでしょう。これらの結果、昨年の記録的な金価格を追い求める投資家の繰延需要の一部が解き放たれるかもしれません。

3つ目のサプライズとして、2025年に金価格が3,000ドルの節目を突破すると予測します。

予測を証明する過去の傷跡

今年の予測というこの“愚行“に関わってきた10年間、自分自身を揶揄することもあれば、予測プロセス全体の不合理さを揶揄することもありました。誤解を恐れずに言えば、最初の4年間は12個のサプライズ予測のうち10個が的中し、自分には資本市場を予知する能力があると錯覚したこともあり、皆さんにもそう思わせてしまったかもしれません。

とはいえ、年月が流れ、私は行動バイアスに屈し、ビギナーズラックも終わり、平均の法則から逃れることはできませんでした。過去5年間に私の予測力は地に落ちました。2020年以降に予測した15個のサプライズのうち、的中したのはわずか5つでした。今年は2016年と2017年の過去2回成し遂げたように、3つすべての予測が的中するかもしれません。

10回目となる今回の結果がどうなるにせよ、私が長年行ってきた興味深い観察が積み重なることに変わりはありません。まず、サプライズと予測は違います。サプライズとは全く予想していなかった結果です。定義上、サプライズは起こり得ないことであり、それが起こることは稀です。つまり、毎年3つもサプライズを予測するのはおかしいということです。対照的に、予測には確信、分析、洞察力が必要です。気象予報士は、数日後の天気を予測する自分の能力に自信を持っています。私の予測精度を上げるには、めったに起こらないサプライズを追い求めるのではなく、自信のある予測をすべきなのかもしれません。

第2に、予測期間を暦年に限定することも恣意的です。過去には、その年に実現しなかったサプライズ予測が翌年に実現した例もあります。バリュー志向の投資家はしばしば、投資の機会を早期に認識しますが、投資が利益を生むまで忍耐が求められます。昨年は、債券市場でハイイールド債が再びパフォーマンス首位になるという予測が的中しました。しかし、残りの2つのサプライズ(バイオテックと不動産)は実現しませんでした。歴史が繰り返されるとしたら、今年はバイオテックと不動産への投資が活発化する兆候に注目するとよいかもしれません。

結局のところ、10年にわたるこのシリーズから学んだ変わらぬ教訓は、投資の結果は極めて不確実ということです。そして、一貫性と規律のある再現可能な投資プロセスを活用することで、投資家は長期的な財務目標の達成に最も近づくことができるのです。

2025年、すべての投資家に嬉しいサプライズが訪れますように。

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